千曲市戸倉のとたに接骨院です。
前回の続きです。
今回は痛みの種類と効果的なお薬についての云々です。
ちなみに久光さんからはまだ連絡は来ません。
私たちの生活の中には様々な痛みがありますが、まずはその種類について云々言います。
接骨院や整形外科で出会う痛みのほとんどが、大きく2種類に分類されます。
1.侵害受容性疼痛(シンガイジュヨウセイトウツウ)
2.神経因性疼痛(シンケイインセイトウツウ)
この2つです。
他にも「心因性疼痛」と言うのもあるんですが、心療内科や精神科の領域に入ってくるのでここでは省きます。
1.侵害受容性疼痛
これは侵害受容器を介して脳に伝えられる痛みの事です。
・・・はい、説明しましょうね。
侵害受容器というのは、簡単に言うと神経の先っちょについているセンサーのようなものです。
そのセンサーが周囲の状態を感知して脳に伝えているんですが、そのセンサーが脳に伝える痛みの事を「侵害受容性疼痛」と呼びます。
そしてその中でも「侵害刺激による痛み」と「炎症性の痛み」に分類されます。
「侵害刺激」というのは、「侵害」つまり外部から攻撃を受けるという意味で、刺激を受けたことにより組織が壊れる危険をセンサーが感知し、脳に知らせるための痛みの事を「侵害刺激による痛み」と呼びます。
「炎症性の痛み」というのは、組織が壊れた際に起きる炎症をセンサーが感知して、脳に知らせるための痛みです。
つまり・・・
っとなった時に
「あぁぁそんなに引っ張ったら靭帯が切れちゃうよぉぉ‼‼‼」
が「侵害刺激による痛み」で
こうなって
「ハイここ切れましたよ~切れてますよ~」
の痛みが「炎症性の痛み」です。
要するに侵害受容器が脳に伝える「危険信号」の事を「侵害受容性疼痛」と呼ぶわけです。
2.神経因性疼痛
「侵害受容性疼痛」がセンサーの周りで起きていることを脳に伝えているのに対して、この「神経因性疼痛」は読んで字の如く、「神経そのものに発生した異常」によって起こる痛みです。
そしてこれもやはり2つに分類されます。
「一過性の異常による痛み」と「神経障害性疼痛」です。
「一過性の異常」とは、長時間正座をしていて足が痺れた経験があると思います。
しばらく動けませんが時間が経てば元に戻りますよね?
あれです。
「神経障害性疼痛」は最近テレビなんかでも耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
これは神経自体が病変を起こしたり、損傷したときに発生する痛みです。
一般的に「神経痛」と呼ばれるものがこれですね。
神経が傷つくことで、神経が痛みを伝達する為に作られる物質が過剰に作られます。
その結果、痛みを伝達する神経が興奮状態になり痛みが発生するという仕組みです。
腰椎椎間板ヘルニアにおける足のしびれや痛みがそれにあたります。
そしてすべての痛みがこのどちらかに分類されるわけではなく、「侵害受容性疼痛」と「神経障害性疼痛」が同時に発生する事もあります。
腰椎椎間板ヘルニアで例えると、足がしびれたり痛くなったりするのは傷ついた神経が興奮して発生する「神経障害性疼痛」ですが、腰の痛みは椎間板や神経が傷ついた際に発生する「侵害受容性疼痛」です。
これを「混合性疼痛」と言います。(そのままやん)
はい、ここまで痛みの種類について云々言ってきましたが、何か質問のある方は挙手をお願いします。
・・・いませんね。では次にお薬について云々言いたいと思います。
前回の云々では湿布の役割について云々言いました。
あくまでも痛み止めですよ、と。
今回は薬物療法として代表的なものを3つご紹介します
久光さんから連絡が来ないので、今回は第一三共さんのwebサイトを拝借したいと思います。
貫地谷しほりさん、北川景子さん、谷原章介さんのCMでおなじみのロキソニンSシリーズです。
ん~・・・かわいいですね~綺麗ですね~かっこいいですね~
ロキソニンSにも湿布があったので最初からこっちでも良かったと思ったら温感がありませんでした。
ロキソニンSの成分表がこちらです。
この「ロキソプロフェンナトリウム水和物」と言うのが「プロスタグランジン」の生成を抑制する「抗炎症薬」です。
前回に引き続き出てきましたね~「プロスタグランジン」覚えていますか?
ん?ホントに覚えていますか?(忘れてる方はこちらをどうぞ)
この他にもプロスタグランジンの生成を抑制する抗炎症薬がたくさんあります。
これらをまとめて「NSAIDs」(エヌセイズ)=非ステロイド性抗炎症薬と呼びます。
このNSAIDsの働きを分かりやすく図にしてくれているサイトがあったのでご紹介します。
ファイザーとエーザイが共同で制作している疼痛.jpとゆーwebサイトです。
この中にこんな図が載ってました。
「痛み刺激」とはつまり「侵害刺激」の事です。
侵害刺激が加わって細胞が壊れると、その細胞の膜から「アラキドン酸」という脂肪酸が放出されます。
「アラキドン酸」を「シクロオキシゲナーゼ」という酵素が分解するときに、その代謝物として「プロスタグランジン」が作られます。
プロスタグランジンには炎症を促進して痛みを増強する作用があるわけですが、NSAIDsはシクロオキシゲナーゼの働きを抑えます。
その結果プロスタグランジンの生成が抑えられるので、炎症が抑えられ痛みが和らぐという仕組みです。
つまりNSAIDsは、「侵害受容性疼痛」の「炎症性の痛み」に効果を発揮する薬というわけです。
「それだけ?」と思った方もいるのではないでしょうか。
そう、それだけなんです。
「炎症性の痛み」には効果がありますが「侵害刺激による痛み」には効果がありません。
そして「神経障害性疼痛」にも効果がありません。
一般社団法人日本ペインクリニック学会が出している「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版 」に次のように記されています。
〈日本ペインクリニック学会webサイトより https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shi-guide08_11.pdf 〉
ここに書いてある「アセトアミノフェン」というのは「解熱鎮痛薬」と呼ばれる薬品で、痛みを和らげる効果和あるんですが炎症を抑える効果はありません。
総合感冒薬(いわゆる風邪薬)の良く配合されているものですね。
神経障害性疼痛の治療においてNSAIDsとアセトアミノフェンは「推奨しない」とありますが、要するに「効果がない」という事ですね。
では神経障害性疼痛に効果のあるとされている薬をご紹介しましょう。
ファイザーとエーザイが共同で販売している「リリカ」シリーズです。
写真は錠剤ですがカプセルもあります。
この記事を書いているH31年4月現在「神経障害性疼痛」効果があるとして承認を受けているのはこのリリカシリーズだけです。(※①)
先程ご紹介した疼痛.jpに効果を図式したものがあります。
傷ついた神経からは痛みを伝える「神経伝達物質」(ピンクの丸)が過剰に放出されることで「神経障害性疼痛」が起こりますが、神経伝達物質を過剰に放出させる物質(黄色い四角)が「カルシウム」です。
神経がカルシウムを過剰に取り込むことで神経伝達物質が必要以上に放出されるのが神経障害性疼痛ですが、リリカに含まれる「プレガバリン」という薬剤がカルシウムの取り込みを抑制することで神経伝達物質の過剰放出も抑制されて痛みが和らぐというメカニズムです。
先程も言った通り、リリカは現在日本国内で唯一「神経障害性疼痛」の効果が承認されている薬です。(※①)
なのでいま日本で一番利益を上げている薬だそうです。
この薬を製造・販売しているのが、疼痛.jpのwebサイトを運営しているファイザーとエーザイです。
相当儲かってるみたいですね~
しかしこのリリカの承認については、どうやら問題がありそうなんです。
リリカの製品情報に関する添付文書の中に、どのような経緯で承認を受けたのかを紹介する部分があったのでご紹介します。
内容をまとめます。
まず「帯状疱疹後神経痛」に対して治験が行われ、有効性と安全性が認められて承認を受けます。
「帯状疱疹後神経痛」とは、帯状疱疹を発症したときに症状が進行したことによってウイルスが神経を傷つけることによって起こる痛みで、帯状疱疹が治ったにもかかわらず残り続ける「神経障害性疼痛」です。
その後「糖尿病性末梢神経障害に伴い疼痛」に対して治験が行われ、有効性と安全性が認められます。つまり糖尿病が原因で神経が病変を起こし発生する「神経障害性疼痛」にも有効だったという事です。
続いて「線維筋痛症」という病気に対して治験が行われて有効性と安全性が認められ承認されました。
「線維筋痛症」というのは簡単に言うと「原因不明のあちこち痛くなる病気」です。脳の中の痛みをコントロールする機能がうまく働かなくなるために起こるとされています。
そして最後に「脊髄損傷後疼痛」に対する治験が行われて安全性と有効性が認められました。
これは脊髄損傷を起こした後、損傷した脊髄の病変により不可解な痛みが発生する「神経障害性疼痛」です。
治験が行われたのは以上の4疾患です。
ですので通常であればリリカの適応症はこの4疾患だけのはずです。
しかし「帯状疱疹後神経痛」、「糖尿病性末梢神経障害に伴う疼痛」、「脊髄損傷後疼痛」という神経障害性疼痛の代表的な3疾患に有効だったため「こりゃ神経障害性疼痛全部利くっしょ」という理論的な推測に基づいて「神経障害性疼痛」に範囲を拡大して承認を受けました。
とゆー事で現在のリリカの適応症は「神経障害性疼痛」と「線維筋痛症に伴う疼痛」となっています。
話の流れはご理解いただけましたか?
現在の整形外科業界では、「慢性痛」つまり長くずっと続く痛みは神経障害性疼痛も含まれるとする認識が広まっています。
なので長く同じ場所の痛みで通院している人に対して「慢性痛だから」という理由でリリカ®が処方されるケースが多いようです。
しかし薬の効果よりも、重大な副作用による事故が多数報告されています。
その多くが「めまい」や「傾眠」(意識障害)による事故です。
この2つの症状は実に20%以上の患者に表れると言います。
服用後に車を運転して事故を起こしたり、転倒して骨折をしたり、意識障害で救急搬送されたりと言ったことが多数発生しているそうです。
整形外科疾患の中には確かに「神経障害性疼痛」がありますが、ほぼ全て「混合性疼痛」です。
しかしリリカ®で治験が行われた代表的な3疾患は、混合性疼痛ではなく神経障害性疼痛「単独」で起こるものです。
リリカは侵害受容性疼痛に効く薬ではありませんので、「混合性疼痛」に対して効果を発揮するかどうかは何ら解明されていません。
にも拘らず多くの整形外科でリリカ®が処方されているのが現状です。
どーですか?ちょっと問題ありな感じしません?
この人めっちゃ怒ってます。
総合的に考えると、特定の疾患以外では神経痛に有効な薬は今のところ無いと考えるのが妥当かもしれません。
そして薬物療法としてもう一つ代表的なものが「神経ブロック療法」です。
俗に言う「ブロック注射」と呼ばれているやつです。
侵害受容性疼痛にしろ神経障害性疼痛にしろ、神経が脳に痛みの情報を伝えることで「痛い」と感じるわけですが、麻酔やステロイド剤などの強い抗炎症薬でこの痛みの情報を遮断(ブロック)するという方法です。
硬膜外ブロックや星状神経節ブロック、神経根ブロックなど症状や場所によって様々な方法があります。
この方法は、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛のどちらにも一定の効果があります。
まあ、ブロック注射の事はこんなもんでいいでしょー(短っ)
リリカの話が長くて疲れちゃいました・・・
今回は痛みの種類と薬物療法について云々と言ってみました。
難しい単語やややこしい話まで盛りだくさんの内容でお送り致しました。
次回は治療法としての薬物療法の役割について、僕の持論を云々と言いたいと思います。
またややこしい話になるかもしれませんが乞うご期待。
などと云々。
〈続きはこちら〉
【令和3年1月21日追記】
この記事を公開した直後の平成31年4月15日に第一三共から神経障害性疼痛の治療薬として「タリージェ」という薬剤が発売されています。
こちらは効能の欄に「末梢神経障害性疼痛」と記載されています。
つまり効果が期待できる範囲が限定されているとゆー事ですね。
どーやら線維筋痛症に対する治験がうまくいかずに承認が得られなかったようです。
このタリージェは「ミロガバリン」とゆー薬効成分がカルシウムの取り込みを抑制するとゆー物なので、作用機序は理論上リリカと同じですね。
しかしこれだけ「リリカが唯一~」と言った数日後に発表されるなんて、第一三共さんも人が悪いよねぇ
などと云々。
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